マンション建替え問題③マンション建替えはいつかしなければならないが、現状はほぼ不可能

 

マンション建替えにも真剣に考える「海風よろず相談所」です。

この連載でマンションの耐用年数について60年としているように、マンションにもいつかは寿命が来て、建替えを検討する時が必ずやってきます。

しかし、実際にマンションの建替えをしようとしても様々な問題・障壁があり、事例は本当に少ないのです。相当良い条件がそろわない限り、現状ではほぼ不可能と思われます。

 

マンション建替えの実施状況(平成25年4月1日現在)/国土交通省

 

日本全国でも、220件程度。。。(少し古く平成25年の資料ですが。)

マンションの建替えが難しい原因は主に下記の3つとなります。

 

「仮住まい」や「引っ越し費用」の問題→実際に住んでいる方の不安。高齢者は「終の棲家」として考えている方が多くいらっしゃいます。

 

「賃借人への立ち退き」や「家賃収入が途絶える」問題→マンション1室を賃貸しているオーナーの不安。建物老朽化を認めずに、賃貸借契約解除に応じない賃借人等がいます。

 

「解体費」や「建設費」などの費用の問題

建替え事例の多くは「等価交換方式」に基づくもので、居住者が所有している土地を出資し、その土地にマンションデベロッパーが建物を建設、建物完成後に、居住者と不動産会社それぞれの出資比率に応じた割合で土地建物を取得するといった手法です。この等価交換といった手法は、建替えをしたら今より建物が大きくなるのが前提で、その余剰分を販売することによって、所有者の建替え資金を捻出できるというメリットがあります。

よく、「マンションを建替えたら、費用負担はなくて新築のマンションを手に入れることができた。」と夢のような話しがありますが、これは建築費・解体費を余剰分(「保留床」といます。)で支払っているのです。つまり、これまでに建替えができたマンションは、容積率が余っていたために以前より大きな建物を建てることができ、それを売却することによって資金を捻出できたから建替えができただけです。

しかし、日本には多くの「既存不適格マンション」が存在します。既存不適格マンションとは「建設当時は適法だったが、後の法改正で不適格となった」ものです。具体的には「建設時には容積率200パーセントだったものが、現在は180パーセントになっている」などがあり、建替えすることで建物の大きさが小さくなってしまうので、建替えは非常に難しくなります。

つまり、広大な敷地の一部にちょっとだけ建物が建っているような場合であれば、容積率が余っているので、余剰分(保留床)を売却することができますが、都心のマンションではそんなマンションは殆ど存在しないのです。

さらに、余剰分(保留床)を売却するのにも、マンションの買い手がいなくてはなりません。(現在、建替えを検討するようなマンションは立地が良いため、該当することは少ないですが、)少子化・人口減少のこれからの日本の住宅事情ではマンションも売れなくなる時期が来るかもしれません。

 

建替えは「生活」もあり、「費用面」もあり、足並みを揃えるのが、非常に難しいのです。

次回は「法律」の「マンション建替円滑化法」について書きたいと思います。

 

当事務所では、マンションの建替えについて「マンション管理士による無料相談」を行っております。

 

建替えについての運営方法もアドバイスできますので、お気軽にご相談下さい。