マンション建替え問題④建替えではない選択肢

マンション建替え問題にも真剣に取り組む「海風よろず相談所」です。

3回までの連載で建替えも耐震補強も非常に困難であると話をしてきました。

国もこの状況を黙ってみているわけではなく、下記の取り組みをしております。

①「耐震不足のマンションには建替え費用が負担とならないように容積率を緩和しよう」

国で容積率の緩和規定を定めても、都市計画は都道府県で策定するので、実際は条件が厳しく、簡単に容積率緩和を受けることは難しい状況です。

②「建替えの決議要件を緩和しよう」

建替えは本来、民法の規定で共有者の処分行為となるので、「全員同意」が必要となりますが、区分所有法でこれを総組合員の4/5まで引き下げています。これは権利変換方式といい、原則現在の区分所有者が新マンションにも戻ってくることとなります。

さらに、平成26年にマンション建替え円滑化法を改正して、「敷地売却方式」を制定して、4/5の決議で事業者に売却することができるようになりました。

さらに、現在では決議要件の4/5を3/4に引き下げる案もあり、建替えを推進する方針であることには変わりはありません。 

 

 

【建替えではない選択肢】

マンションもいつかは建替えるしかないのですが、建替えしか選択肢がないかのような流れには疑問を感じる部分もあります。容積率をUPさせるなどのボーナスを与えて、すべてのマンションが建替えられて住戸数が増加した場合、人口減少がはっきりしている日本でどれだけの住宅が余ってしまうのでしょうか。

日本の住宅数はすでに飽和に達し、都市部においてすらむしろ空き家対策に本腰を入れなければならない局面であるのに、建替えを促進したらどうなるのでしょうか。

いったんマンションが建った場所に、永遠にマンションが建替えられ続ける必要もなく、別の用途に転換される可能性を示したのが、新しく制定された「敷地売却制度」であり、買い取った事業者はマンションを解体した後に、どう活用するかは原則は自由なのです。

必ずしもすべてのマンションが建替える必要などはありません。建替えではない選択肢として、欧米の区分所有建物であるアパートメントでは、「区分所有権の解消制度」があります。

敷地売却制度は区分所有解消の方法の一つの手法となります。

要するに「建物を解体して、土地を売って、金銭を振り分けて解散する。」

しかし、これを強硬に行うと、反対しても、わずかな金銭を渡されてマンションを追い出されるような事例が出る可能性を持っており、今後の問題となりそうです。

 

今後も、マンション建替えの動きについて注目して記事を書いてまいります。

宜しくお願い申し上げます。